未熟児網膜症

未熟児網膜症

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商品詳細

急速に進行する網膜剥離へ的確に対応するために、短期間で見極め、時期を逃さない治療のタイミングと適応・治療法の選択を学びとる !

近年、周産期医療の進歩によって体重が非常に少ない児の生存が可能となり、未熟児網膜症の発症が増加するとともに、重症例も多くみられるようになった。
本書では、まず“実践編”として、確実な眼底検査を行うためのコツと写真撮影法を解説。それらで得られた眼底所見をいかに解釈するか、未熟児網膜症の発症前から活動期を経て瘢痕期まで、進行と病期分類を非定型例を含めて詳細に説明する。眼底像にはシェーマをつけ、注意すべき微細な変化も学べる。続いて、レーザー網膜光凝固治療、網膜剥離に対するバックリング手術・硝子体手術の詳細と治療適応の考え方、有力な選択肢として国際治験が進んでいる抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療の実際と問題点を豊富な画像と共に把捉できる。また、高次施設へ紹介・搬送する場合、限られた時間の中で行うべき診療情報の伝達・共有、NICUでの管理と移送、家族へのインフォームド・コンセントもしっかりと学べ、鎮静化後も長期間にわたって続くリハビリテーションとロービジョンケアや晩期合併症を見逃さない経過観察など、子ども本人への支援も解説する。
“基礎編”では、未熟児網膜症をさらに理解するための土台となるべき知見を集めた。病理や類似疾患を理解していれば、診療の際に大きく役立つ。
未熟児網膜症は、定期的かつ厳重な眼底検査による経過観察で、時期を逃さず介入することが重要である。手術を行って良好な視力が期待できる期間は、増殖が悪化して網膜剥離が起こり始めてからごくわずかに過ぎない。そのタイミングをいかに逃さないか、本書ではわが国を代表する未熟児網膜症診療を専門とする医師が700点以上の豊富な画像をもとに、長年にわたって培ってきたノウハウを解説する。

 

目次

実践編―診療の向上のために

1章 未熟児網膜症とは――その診療における心がけ
 疾患の概念を理解する
  ・発達途上の網膜血管に起こる増殖疾患である
  ・病的血管新生と増殖には血管内皮増殖因子が関与している
  ・病的血管新生と増殖が進行すると網膜剥離になって失明する
  ・活動期と瘢痕期がある
  ・発現頻度や重症度を決める最も大きな要因は網膜血管の未熟性である
  ・高濃度酸素は未熟児網膜症を悪化させる誘因である
  ・ほかにも発生に関与する多くの因子が考えられている
  ・近年は軽症例の減少と重症例の増加の二極化がみられる
 病態理解のために,病期分類を正確に知り現状を的確に診断することが重要である
 未熟児網膜症診療の目標と心構え
 血管新生を抑えるための治療
  ・光凝固
  ・冷凍凝固
  ・抗血管内皮増殖因子治療
 網膜剥離に対する治療
 未熟児網膜症診療の教育

2章 眼底検査法と写真撮影法
 眼底検査法
  ・わが国の診療環境
  ・眼底検査の対象と時期
  ・検査の準備
  ・検査の方法
  ・観察時の注意点
 写真撮影法
  ・RetCam®について
  ・撮影前の準備
  ・撮影の実際
  ・眼底写真の利用法
  ・手持ち眼底カメラでの撮影
 その他の検査法
  ・超音波Bモード検査
  ・光干渉断層法
  ・レーザー走査広角眼底検査

3章 網膜症の進行と病期分類
 厚生省分類と国際分類
  ・厚生省分類
  ・国際分類
 活動期分類(国際分類)
  ・病変の位置と範囲(location and extent of disease)
  ・病期(stage)
  ・plus diseaseとpre-plus disease
  ・aggressive posterior ROP(厚生省分類II型)
  ・網膜剥離の進行
 非定型例
  ・特徴
  ・病態メカニズム
  ・治療法
 瘢痕期分類(厚生省分類)

4章 光凝固
 光凝固の適応と考え方
 光凝固
  ・レーザー光凝固装置
  ・治療準備
  ・方法
  ・術直後の管理
  ・経過観察と追加凝固
  ・光凝固は十分行われているが増殖が起こった場合
  ・寛解の判定
 光凝固例の眼底像
 冷凍凝固
  ・方法
  ・合併症

5章 診断や治療適応に迷う場合
 治療が必要かどうかの判断に迷う場合
  ・自然治癒
  ・治療適応
 バックリング手術と硝子体手術でstage4の早期治療適応に迷う場合
  ・バックリング手術を優先する場合(硝子体手術が有効でない場合)
  ・バックリング手術が有効でない場合(硝子体手術を優先する場合)

6章 網膜剥離に対する治療
 網膜剥離に対する治療の適応と考え方
  ・早期治療の重要性
  ・網膜剥離と増殖組織の進行過程
  ・classic ROP(厚生省分類I型)とaggressive posterior ROP(APROP/II型)の違い
  ・移送と全身麻酔に関わる問題
  ・手術に際しての基本的な考え方
  ・手術方針
  ・手術眼の選択とインフォームド・コンセント
 光凝固を行っても増殖が進行(stage4前)あるいは網膜部分剥離(stage4)に対する早期手術
  ・classic ROP/厚生省分類I型の早期手術
  ・APROP/厚生省分類II型の早期手術
 網膜全剥離(stage5)に対する硝子体手術
  ・水晶体切除と硝子体手術(lensectomy & vitrectomy)
  ・開放式硝子体手術(open sky vitrectomy)
 再手術
 新しい手術機器
  ・広角眼底撮影装置
  ・光干渉断層法
  ・OCT angiography
  ・手術用顕微鏡の発展

7章 抗血管内皮増殖因子治療
 抗血管内皮増殖因子治療と薬物の選択
  ・治療の考え方
  ・治療に用いる薬物の種類と違い
  ・治療に用いる薬物の選択
  ・適応外使用と倫理委員会
  ・国際治験
 治療手技
 治療の適応と実際
  ・pre-vitrectomy adjunct
  ・salvage therapy
  ・monotherapy
 治療の問題点
  ・硝子体注射に伴う眼局所の合併症
  ・牽引性網膜剥離の進行
  ・全身の合併症
  ・再燃

8章 診療情報の伝達・共有と遠隔医療
 搬送時に必要な診療情報
  ・まず最初に伝えるべき眼科情報
  ・全身状態についての情報
  ・NICU間での情報伝達
  ・その他の重要事項
 画像の伝達法
 遠隔医療の必要性
 これからの遠隔医療

9章 NICUでの管理と麻酔,患児の移送
 NICUでの管理
 眼底検査や光凝固の際の管理
  ・未熟児網膜症に対する眼底検査の対象と検査時期
  ・NICUでの未熟児に対する眼底検査の実際
  ・光凝固の際の特記事項
 未熟児の全身麻酔
  ・新生児医療の進歩と未熟児網膜症の増加
  ・未熟児の全身麻酔の問題点
  ・いつ手術を行うべきか
  ・未熟児の全身麻酔の麻酔手技
 新生児搬送
  ・搬送前の情報共有
  ・術前・術後の搬送方法

10章 家族に対する説明とインフォームド・コンセント
 病態
 治療
  ・光凝固
  ・抗血管内皮増殖因子治療
  ・網膜剥離に対する手術
 治療後の経過観察

11章 リハビリテーション・ロービジョンケア
 屈折矯正と視能訓練
  ・屈折異常
  ・斜視
 重篤な視覚障害をもつ乳幼児に対して
  ・視反応の見方
  ・早期からのロービジョンケア
  ・羞明
  ・身体障害者手帳
 重複障害
 就学相談と学校での対応
  ・未熟児網膜症による視覚障害児の就学
  ・医療機関から教育機関への連携
  ・就学相談の実際

12章 晩期合併症
 角膜混濁
 白内障
 緑内障
 硝子体出血
 裂孔原性網膜剥離
 小眼球, 眼球萎縮
  ・小眼球
  ・眼球萎縮
 斜視


基礎編―疾患のさらなる理解のために

13章 疾患概念の成立と診断治療の歴史
 疾患概念成立の歴史と発症頻度の変遷
  ・海外での遷移
  ・わが国での遷移
 厚生省分類と国際分類の制定の歴史
 治療の変遷
  ・光凝固と冷凍凝固
  ・硝子体手術
  ・抗血管内皮増殖因子治療

14章 発症率と治療率の変遷(疫学)
 出生数の減少と低出生体重児の割合
 未熟児網膜症の発症率と治療率の推移
 全国視覚特別支援学校調査にみる未熟児網膜症の推移と現況
 まとめ

15章 病理
 病理を理解する重要性
  ・stage1(demarcation line : 境界線)
  ・stage2(ridge : 隆起)
  ・stage3(extraretinal neovascularization : 網膜外線維血管増殖)
  ・stage4(partial retinal detachment : 網膜部分剥離)
  ・stage5(total retinal detachment : 網膜全剥離)

16章 未熟児網膜症の基礎研究
 遺伝子解析
  ・未熟児網膜症の遺伝素因と遺伝子研究
  ・未熟児網膜症の発症に関連する遺伝子
  ・未熟児網膜症の鑑別診断と遺伝子診断
 動物モデル
  ・動物モデルの必要性
  ・未熟児網膜症の動物モデル
  ・発生期の網膜血管新生
  ・マウス酸素誘導網膜症モデル
  ・展望

17章 診断に迷う類似疾患
 新生児硝子体出血
 家族性滲出性硝子体網膜症
  ・臨床所見
  ・病態生理と遺伝子
 色素失調症
  ・疾患の概念と特徴
  ・眼所見
  ・診断と治療
  ・全身症状と管理

索引

 

商品仕様

著者 東 範行 (国立成育医療研究センター)
出版社 三輪書店
発刊年 2018年